遂に我らが軍曹閣下の小説がこの世に爆誕した!!
閣下が記す淀みきった現代社会におけるリアルな戦争とは?
鋭い視点で追及された戦争の真実と世界情勢。
幾重にも積み重ねられてきた歴史と人間の業は、みほ達あんこうチームの運命を何処へ向かわせるのか?
あなたは今その目撃者となる…
西住みほの眼前には見馴れているはず光景が広っていた。
彼女の網膜が映す景色は確かに住み慣れた大洗の美しい大磯海岸なのだが、人間的いや、動物本能的に見るに 耐えがたい無数の物体が横たり「見馴れてる」と言うより「見馴れてるはず」と表現せざるをえないのである。
それら無数の物体は壊され尽くされ朽ち果てた人間だった。
西住みほのかたわらには四人の仲間がいた。
武部沙織、秋山優花里、冷泉麻子、五十鈴華。
いずれもみほが履修している戦車道の仲間達だ。戦車道は100年前から続く武道で近代戦争における革新的な兵器「戦車」を武道として取り込み、その性質上大変な危険を伴う為幾多のルールを設け「スポーツ化」した武道である。
しかし、いくらスポーツ化しようとも、どの武道にも「精神」が伴う。東洋、西洋に関わらず軍事をルーツに持つ武道は少なからず精神を重んずるものだ。
彼女達も例外では無かった。
だが、今目の前にある景色は彼女等の戦車道精神を挫く。
茫然自失の西住みほ、
両手で顔を覆い声
を殺して泣く武部沙織、
下唇を前歯が食い込まんばりに噛み締め怒りに震える秋山優花里、
彼女の両親は学園艦と呼ばれる巨大都市艦で理容師を営んでいた。
今彼女の視線の先にある水平線上には巨大な艦体が猛烈な炎に包まれている。
いつもは無口でクールな冷泉麻子はずっと俯いたままだ。
対照的に五十鈴華は目を見開きまばたきもせずにこの地獄絵図を見据えている。
最初に口を開いたのは秋山優花里だった。
「こんな事…。わたしは絶対ゆるせません!」
「うん…」条件反射的だな、とみほは心中で自らに毒づいた
「もうここに咲ける花はないのかもしれませんね…」
「早くこんな場所離れようよ!もう耐えられない!」
「もう泣くな、美容に良くないぞ」あまり本心を口にしない所はいかにも麻子らしい。直後、小声で呟いた。
「必ずカタキをとってやるからな」
黒い輝きのある声だ。
しかし、この呟きを他の四人は聞き逃さなかった
この現実に向き合うにはまだ彼女等は幼い高校生だった。
まだ現実を現実として捉えるには時間が少なすぎた。
しかし、この時発した麻子の怨恨の台詞は、彼女等がこの時、戦車道精神、もしくは兵士としての本能が芽生えた瞬間だったのかもしれない。
ここは死臭漂う紛れもない本物の戦場だった。